平均年収のウソとホント

年収や給与について国が実施している統計は、実はたくさんあります。その中でもよく用いられるのが、「国税庁の民間給与実態統計調査」、統計局のHPで誰でも簡単に手に入りますが、最新の報告書が、2018年(平成30年)9月にまとめられていますので、ご紹介したいと思います。

平均年収

国税庁の平成29年「民間給与実態統計調査」によると全国平均給与は、433万円。男女別に見てみますと、男性531万、女性287万円となっています。女性少な!!男性とは以外と差があるんですね。本統計では、給与をもらってる人なら契約社員でもパートタイマーの方でも集計には含まれます。また、本集計は給与1件1件をベースに統計を取っています。つまり、共働きの場合でもそれぞれ集計されていますので、合算すれば大きな収入として生活している世帯もいるでしょう。

国が出している統計には「一人」ではなく「1世帯当たり」の収入を比較しているものもあります。例えば、夫500万、妻300万の場合では、世帯収入としては800万を1件として集計されるため、1世帯あたりの年収平均を取るとぜんぜん違う集計結果になるんですね。このように、どのような集計をしているかを知らないと的外れな理解となってしまいます。

「民間給与実態統計調査」ってどういう集計しているの?

この民間給与実態統計調査、昭和24年から毎年調査されています。70年近くデータが溜まっているんですね。もちろんパソコンがない時代、電卓もない。そろばん使って集計してたんでしょうか??今考えるとすごいですね。ちなみに近年の平均年収を調べてみました。平成10年、今から20年前の平均年収を見てみると464万8千円。今より30万以上も高い!以外と差、ありますねー。(笑)


(参考)国税庁 民間給与実態統計調査

それでも最近は、徐々に回復してきているようですね。前年の平成28年と比べて平成29年の平均年収は、年収ベースで12万。月ベースで1万上がっています。街角インタビューで「景気回復の実感ありませんね~」とよく聞きますが、数字を見ると、確実に給料が増えていることが分かります。中には減っている人もいるんでしょうけど、増えている人も確実にいる。ということなんですね。

さて、この「民間給与実態統計調査」さすがに全国民に聞いて回ってるわけではありません。国が会社を選んで、アンケートを送ってるんですね。それでそこの会社の従業員のそれぞれの給与をどれだけ支払っているかをまとめて、国に回答してる。もちろん一人一人訪問して調査なんてことはやらないわけです。29年度の回答率は75.5%!4社に3社は回答している。義務じゃないのに、、結構みなさん協力的なんですね。

回答に協力した事業所は、従業員が10人未満の会社もあれば大手一流企業もあり、まんべんなく調べているようです。ちなみに全国全員調査(全数調査という)すると5,811 万人。。を調べないといけないですが、まぁやってられないですよね、ピックアップして調べてだいたいの平均を出しました。ってことですね。ちなみに全体の0.5%の給与取得者を調べていることになります。ちょっと少ない気もしますが、、統計的にみるとこれでも十分。

「民間給与実態統計調査 平成29年」調査対象は以下の通り

  1. 調査対象者 316,885人
  2. 回答に協力した事業所数 20,383社

集計方法によっては平均の値がウソになる

この「民間給与実態統計調査」データ集計のポイントですが、「民間」と頭に付いてるだけあって、公務員のデータは含まれてません。公務員の平均給与は別で集計されています。(総務省の地方公務員給与実態調査)平成28年度調査では公務員の平均年収は約630万となっておりますので、「公務員を合わせた全国民の平均年収」と考えたときには、前述した443万より平均がアップしますね。このように集計方法によって出てくる値がぜんぜん違ってくる。自分が思っていた全国民の平均年収と比べるとウソの値となるんですね。

さらに細かいことを言うと「給与」となっていますので、源泉取得税の徴収がない方は含まれません。例えば小規模の事業主で一時的な報酬が支払われている場案は集計対象となっていません。
<例>個人事業主などに雇われて、(常時2人以下程度で)お手伝いさんのような「家事使用人」に報酬が支払われている場合。

平均には必ずウソ(誤差)が含まれている

本来平均を出すには全数を調べて集計しなくてはホントの値は出てこないわけですが、先ほども言ったように全国民に調査していくのは現実的ではないわけです。なので全体の0.5%のみしか調査してないわけです。ただこれでも十分、全体を調査した時に出てくる値と近い値が出てくるのですが、そこにはやはり誤差が生じます。そこで、このくらいの誤差が生じる。ということが統計的に出すことが出来るので、このくらいの誤差はかんべんしてください!という「標準誤差率」というのは調査結果の補足として載っています。

「標準誤差率(給与) 0.64%」 (民間給与実態統計調査 平成29年)

標準誤差率は統計学による計算にて算出されるもので、毎回集計のたびに違う値になるわけです。分かりやすい例としては、たくさんのサンプルを元に集計すれば、誤差は少ないですし、手を抜いてる少ないサンプルの集計だと精度が低く誤差が大きくなり誤差率がお菊なります。

実際どくらいの誤差になるか出してみましょう。
平成29年の調査では、「0.64%」の割合で誤差が生じますよ。ということなので、平均433万とした場合に、+-27,712円の誤差が生じる計算になります。つまり約430万~436万くらいが全数調査した時の実際の平均年収として考えてください。ということですね。このようなウソ(誤差)を理解して数字をみることが大事です。

いかがでしたでしょうか。ここまで、平均のウソを理解し、値が意味するホントを理解できましたでしょうか。逆に言うと集計は方法によっていくらでもウソがつけるわけですね。みなさんが会社で受けてる報告も都合のよい値に書き換えられているかもしれません!?

次回は、もう少しいろんな集計方法をご紹介していきたいと思います。集計方法の違いで平均年収のウソとホントが見えてくる。こうご期待ください!

ウイチロウ